東京に憧れて


中学生のころ、『東京フレンズ』というドラマにハマった。


高知の田舎町に住む、夢もなにもない女の子が、漠然と東京に憧れて上京し、親友や恋人を作り、夢を見つけて夢に向かっていく話。キラキラした話。


わたしもいつか東京に出て、こんな夢のような暮らしをするのだと。


数年後、わたしは本当に東京にいた。
上京してすぐ、さあバイトを始めよう!と、東京フレンズの主人公と同じように居酒屋でバイトを始めた。新宿の居酒屋だ。
まずチョイスが間違っている。新宿の居酒屋なんて、忙しさしかない。
田舎者だったので、居酒屋=都心だったのだ。


従業員は東南アジア系と中国系の外国人ばかりだった。
店内は煙草と油物の臭いで充満していて、終わってから私服に着替えてもその臭いは消えない。べたつく肌と、髪の毛。終電の満員電車のなかで、わたしは多分ひときわ臭かった。
まかないを貰うタイミングを失って、まかない食べないキャラを確立してしまった。
でも、ネズミが出まくりのきったないところで急かされながら食べる気にもなれなかったのであまり苦では無かった。
毎日帰り道はひどく喉が渇いて、炭酸を買って帰った。


ある日、東南アジア系の人と韓国人に連絡先を聞かれて教えてしまった。
拙い日本語でラインが来る。返すが日本語が拙すぎてなにを言いたいのかよくわからない。東南アジア系の人から毎晩電話が来る。一回出たけど、なにを言っているのかわからない。電話を切って、着拒した。


あーあ、あのドラマだったら瑛太と出会ってラブが始まるんだったのに。